今は昔#14 「やはり格好かナ?・・・」 中津さんそん

 

(はじめに)

 神戸は私には全てが格好良すぎます。。コンナところでガキ時代をやったら さぞや写真写りの良い少年になるだろうと思います。第一にタカラズカの存在です。

あの存在が神経に障ります。新宿で他称不良少年をやっていた日から何とも不可思議な難問に苛立っておりました。 周囲は 「少女学芸会」なんかと丸っきり眼中に置かない雰囲気ですので。 私はタカラズカを言葉にすることを恥じて遠慮しておりましたが・・・。                 

疑問の一;タカラジャンヌの様な【いい女】を嫁さんにできる奴はどんな男なんだろう? 金持ちだけどいかにも頭の軽い馬ずら二枚目であったならば私は救われたものでしょうに。ところが 実際のお婿さんはウルトラ堅実会社の二代目三代目の後継者なのです。しかも名門校の出身者、いずれも品格のある男前なのです。イケメンと評すると 何處かお世辞半分になりますが これは皆さん正真正銘の男っぷりなのです。かなり面白くありません。

そこで疑問の二;どうして 彼等彼女らは皆さん【いい男】【いい女】なのですか?  仲間内の優等生が答えました。「答えは簡単。いい奴といい奴が一緒に為れば、いい奴が生まれるサ 中山競馬でそれぐらい勉強したろう?

 青年は完全に規格外です。無駄な抵抗はしないことにしました。。

(本文)

 ”若さ“は素晴らしいものです。”若さ“に勝る宝はありません。こんなこと誰でも知ってますワ。 人間歳を取ると皆さん異口同音におっしゃいます。

 港湾仕事は 普通朝八時から夕五時までが一本です。夜勤は夜八時かこの昼夜二交 代の仕事を続けてやることを【通しto-si】と呼びます。

昼間働いて、一休みして世間一般夜時間の始まる八時から明け方まで頑張ります。単純計算しても実働16時間の肉体労働です。時間が切迫している時には船会社も荷役会社も常の事です。

所が 追い通し(oi to-si)と言って 実働16時間ですが昼夜21時間も束縛されることがあります。

自由勝手な日雇い労働者なら こんな常軌を逸したような仕事は断ればいいのですが 港湾荷役会社の方であいにく労働者の手配が出来ないこと間に合わないことが生じたりすると 「頼むわ・・」となります。

社員になると 無理も断れない。

昼夜働いて 太陽の顔見てからハイ今から一日働きます、となるといくら若くても 余程事情が無ければやれませんワ

それを 青年は平気でやっているのでした。

 

(おわりに)

青年は知り合いも増えました。 親しい飲み友達も出来ました。中には「うちに来ないか?」とスカウトされたりもします。「あんたの気性には適うと思うヨ」なんて言われたりもします。相手が<いい男>であるだけに猶の事私の心も揺らぎます。

 ただ青年の体内に巣くってしまっている社会通念と言うのか偏見というのか そんなものが青年の精神を素直にさせてくれないのでした。

優柔不断な若者です。

                おわり