今は昔#40 Jikowsつれづれ 「あいつ臭いで・・・シッシ―」 中津さんそん

 

 きのう三週間ぶりに風呂に入った。徒歩一分の銭湯です。早朝6時からやっている朝風呂だから贅沢なものです。

風呂となっては 私にはトラウマもいいところ。83歳のいまだに「風呂は勘弁してくれ」は変わらない。74・5年は昔になるが 東北地方のある里山郷村に居候する我が家族は 風呂となると月に何度も入れるものではない。 いわゆる【もらい湯】であるから 「ありがとうございます ありがとうございます」と頭を下げて御ショウバンに与るわけです。嫌だったな――あの時は。。「ボウズ!(中で)小便すんなよーーー」

 当時私は夏には風呂には入らなかった。川や沼での水浴びで満足していたのです。十分に臭くて痩せこけた少年は 上野駅の地下道だけではなく 神戸にも仙台駅の周辺にも多く見られたものです。

 後年箱根温泉郷で正面玄関の下足番をやっていた時のことですが 初老の極々平凡なご婦人客です。「いらっしゃいませ。ドウゾ御履き物を御預かりいたします」と夫人のローヒールを取り上げたとき 俺はガキの癖に妙な色気を感じたものです。

何故って言って その靴からは あの足の臭気でなく秋の涼しい香りがして来るのです。何も知らない青年は本当にビックリこいた経験でした。コンナ御洒落の出来る女御さんは尊敬しますよ。

 自他ともに認める「不潔」な少年でしたが 50年ぶりの同窓クラス会で 「ああ お前は臭かったナ・・・」なんて思い出話をされると 己の家の格好悪さを思い知らされてやりきれない。 後年 大阪西成でのこと 酒友の某男は失禁がひどく呑むと必ずやってしまう。あまりにも頻々なので誤魔化し清掃も間に合わない。本人だけでなく部屋自体からも異様な臭気が立ち上っているのです。これは正直言って 常人の忍耐限度をかなりオーバーしています。

心無い人間が「こりゃ酷い エズクわ・・・」と顔を顰めると 何とも言えない悲しそうな顔をするのです。同年の彼ももう居ない。

 此れも昔々の話となります。相手は5歳ぐらいのヨーロッパの少女でした。 俺は学校に行かない名前だけの学生、実は日雇い労働者であった。

この少女は妙に小生に慣れ親しんでくる。変な話や 言葉も通じない外国の子供が…

俺は俺で こんな関係を内心自慢していたかもしれない。【この子は 俺が危険でないこと】を見抜いてくれた。つまり証明してくれたのだ。と喜んでいたのです。】

 後に母親が 笑みを浮かべながら smellとかperfumeとか互いに外国語を懸命に操って説明したものでした。

 昨今は 人間関係に【匂い】が無くなりました.徐臭徐臭と騒いだり 塗りたくったり噴霧器したり相手が理解しにくくなりました。無味無臭は生きてるとはいわないよね。。我々老人も加齢臭となりインチキがしやすくなりました。 老臭の方が老醜に通じて味があるのですけれど・・・

                続きます