今は昔#21 「西成に帰るしかないか・・・」
(はじめに)
私には夜職は本質的に無理です。でも女色と脂粉の職場は憧れの星です。チョットやソットでは手は引けません。なにせ人一倍好きな若い男です。次はウイスキー屋の紹介でした。大阪ビル街に近いかなり高尚な店構えです。。十三とは趣が違います。バーテンダーの仕事は麦酒やウイスキーの店出しに似ています。時に果物を弄ってオードブルを作ったりはしますが本人としてはやる気が出てこないバーなのです。
10人ほどいるホステスは飛び切りの美人です。並の美人ではありません。ミス・ワールド級の美人です。なのにママさんは美人でもなく崩れた匂いもなく訳ありの秘密めいた色もなくまるでキャリアおばさんの魅力いっぱいの女御onago-さんです。青年の趣味ではありません。しかし ここの給料は十三では考えられない高給なのです。
青年の仕事の本文は 客の飲み代の掛け取りです。客筋は100%近く社用族です。各社の支払日に並ぶのでした。若者としては まるでサラ金の取立屋にさせられた心境です。即、辞めることを告げました。急の辞職は困ると言われましたが 給料の残金を放棄して去りました。青年は大坂では有り得ない金銭感覚を出すことによって自分の意気を示したのです。これでも恰好付けたつもりなのですが・・・安っぽい話や。
(本文)
実は 青年がやり切れない仕事が別にあったのです。ホステスの監視です。「妙チクリンな客と親しげでないか?」 ママさんの御亭主らしき男に この男は滅多に店には顔を出さないのですが こいつは青年を手下扱いをして何々と注進を求めるのです。「俺はお前の子分ではない」と若者のプライドを傷つけるのでした。「スパイは御免だ・・・」
(おわりに)
西成に戻りました。ベース・キャンプに戻って酒でも飲んで考えることです。
飲めば飲むほど自分に対する怒りで下。「何故にこんなバカげた処に行ったのか?」 あそこは接待所であって酒飲みには無縁の場所でしょう。私は痩せたソクラテスではありませんが82の今に至るまであんな竜宮城には足を踏み入れた経験はありません。
酒飲みには酒飲みの人生があるし職場もあるもんです。
おわり