今は昔#8 「釜ヶ崎 座って半畳 寝て一畳」 中津さんそん。

「働いて 食って 寝る、これぞ人間。」。「働かざる者,食うべからず」なんて言った偉い人がいましたっけ・・。

(はじめに)

 西成労働者の家持は皆無です。殆どの労働者は釜ヶ崎に巣くっている日雇いです。いわば”流れ者”です。世間は、この人たちを「勝手気ままの自由人」と ある人たちは羨み ある人たちは見下げます。

(本文)

彼ら自由労務者の宿がドヤです。ドヤとはどんなものかと言いますと 厖大な利用者とその料金から判ても 並の旅館やホテルとはいきません。

これを簡単明瞭直截に説明するとなるとウーンと唸ってしまいます。

是がいいのではないでしょうか 養鶏工場の鶏個室 あれ金網でなく板塀で仕切ったヤツと思えばドンピシャかもしれません。何処かの独裁国家政治犯を収容する3平米ほどの天井の低い細長い一人部屋と言うところでしょうか

ドヤと称する建物に入ると 廊下の両側に規則正しく個室が並んでいます。 普通のビル一階分を上下二段に個室となっており 上の部屋には細い手すりハシゴで上るようになっています。チョット見た目には 壮観なものですが 「もし火でも出たらどうするの?」と心配しなくもない所ですが そんなヤワな神経の持ち主はおりませんから 平和なものです。

 二畳三畳の個室となりますと 夫婦者か子連れ家族となります。勿論 六畳個室にテレビ冷蔵庫付きの生活をしている「裕福な知能人間」も多

彩です。

(おわりに)

 東京新宿二丁目簡易宿泊所(トウキョウのドヤ)は 当時のものは(昭和35年ごろのことですから昔話になりますか・・・)カイコ棚が多かったように記憶をしております。夜行寝台車の二段ベットです。ところがです。 東京のドヤの利用者は 夜中十二時を過ぎても 芸術談議やら政治やら世の中裏話やらに燃える熱い男女がおおいようです。 一方 釜ヶ崎は高い人口密度なのに 九時も廻れば周囲は寝息だけです。

              おわり